ルイ16世の遺言書

革命の激化に身の危険を感じた国王ルイ16世は、国外逃亡を図るが『ヴァレンヌ逃亡』で捕捉されパリに連れ戻される。

チュイルリー宮殿を追われた国王一家は、その後、タンプル塔に幽閉されていたが、ルイ16世は国民公会での票決により「死刑」を宣告され、1793年1月21日、革命広場(※現在のコンコルド広場)においてギロチン刑にかけられる)。

死に臨むルイ16世の口述による遺言書は、1792年12月25日付けで2通作成されている。

この遺言書の内容は、今日でも良く知られるところであるが、遺言書の最後にルイは「・・・神の御前で次のことを明らかにし、神の御許にまいる準備を整えることにする。
私が犯したとされるいかなる罪も身に覚えはない」

『ベルンシュタイン文庫』より、※ベルンシュタイン文庫:(1877-1962年)とB. スヴァーリン(1895-1984年)のそれぞれの蔵書の一部を合併した約1200点のコレクション。
本コレクションは、特にロシア語文献の収集に力を入れており、19世紀後半から20世紀初期の重要な社会主義運動の文献が網羅されている。

本学のベルンシュタイン文庫には.3様のデザインのルイ16世の遺言書が所蔵されている。




⤵️ルイ16世の遺言書(和訳)

いと聖なる三位一体、父と子と聖霊のみ名において。

本日、1792年12月25日、私、フランス国王ルイ16世は、かつて臣下であった者たちの手で四ヶ月来パリのタンプル塔に家族と共に幽閉され、11日前から家族といかなる連絡も取る事が出来ずにいる。

そのうえ、人間の情念ゆえに結果も予想できなければ、現行のいかなる法にも口実と方法の見当たらない裁判にかけられている。

私の考え方の証人は、神しかおらず、私が話し掛ける事の出来るのも神だけである。

よってここに、神の立会いのもと、私の遺志と気持ちを明らかにするものである。

私は、我が造物主たる神に私の魂を預ける。
神よ、どうか私の魂を慈悲のみ心のうちに迎え入れたまえ。

そして、私の魂の功徳ではなく、私をはじめ救うに値しない人間達の為に父なる神にその身を捧げられた主イエス・キリストの功徳によって、私の魂に審判を下したまえ。

私は、聖ペテロがイエス・キリストから託された力を途絶えることなく受け継いできた我らの聖なる母、使途創立ローマカトリック教会の団結のうちに、あの世へ旅立つものである。

私は、信経および神と教会の戒律に含まれる一切のもの、カトリック教会が今も教え、これまでずっと教えてきた秘蹟や奥義に含まれる一切のものを認め、堅く信じる。

私はイエス・キリストの教会を引き裂く説明をする様々な手段の中で自ら裁き手になると主張した事は一度もない。

これまでも、また神が生きることをお許しくださればこれからも、聖なりカトリック教会に結集する高位聖職者諸氏がイエス・キリスト以来の教会の宗規に従って下し、これからも下すであろう決定にすべてお任せする。

私は過ちを犯しているかもしれない我らの兄弟を心から憐れむ。

しかし、彼らを裁くつもりはない。

キリスト教の慈悲心が教えるものに従って、イエス・キリストと変わらぬくらい彼らを愛している。

私は自分の罪を綿密に知り、罪を憎み、神のみ前にひれ伏そうと務めた。
カトリック司祭の手を借りる事はできないが、神よ、これまでの私の告白を聞き入れ、とりわけ(私の意志に反するとはいえ)私の名において、カトリック教会の宗規と振興に反するかもしれない行いをしてしまった事に対する深い懺悔を受け入れたまえ。

私は常にカトリック教会と心をひとつにしてきた。
もし生きる事を許して頂けるなら、出来るだけ早くカトリック司祭の手を借りて、全ての罪を認め、懺悔の秘蹟を受ける決意である。

引用/要約『国王の従僕クレリーの日記』より



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