カイジ

マイナス勝利
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アカギの人生は凪に突入していた。
風もなく波もない。平凡な人生ほど、つまらない物はない。今の状態なら、死んだ方がマシ。アカギはそう思っていた。

何か心臓を鷲掴みにするような、恐ろしいギャンブルでもないか。
色んなギャンブルをやり、色んな闇を経験してきたアカギは、いつからか深い虚無を抱えるようになっていた。





「今回お前らに見てもらうのは、ある男の資料だ」


一条はドライブにCDを入れる。
デスクに腰を下ろしているアカギは、手元の帝愛関係者のリストを、ペラペラとめくる。

「誰ですかね、ある男って」
「……さぁ」


零が話しかけてくる。
正直どうでもよかった。
最近大きな事件がなく、暇と刺激を持て余していた。
どうせ今回も小さい事件だろう。

やがてモニターに男が映った。
長髪に目元の傷が目立つ。

「これが特調のキーになる男だ。伊藤、カイジ」


一条は珍しく笑っていた。
画面の中のカイジは、カードを手に、泣いている。
アカギは口元で笑う。

(面白い顔……)

からかったら、さぞや楽しい男だろう。
「?」

男の顔が変わった。まるで別人のように、鋭く、研ぎ澄まされる。


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