fly high
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「エスポワール学園前〜。エスポワール学園前〜」

ブザーが鳴って一条はトランクを掴む。学ランのポケットの中の小銭を掴み、座席を立った。夕闇がバスの中を照らしていた。
乗客たちの顔には覇気がない。いや、正確には客ではない。バス内のものたちは、新しく地下町に運ばれてきた、帝愛の『財産』だ。

まるで島流しだな。

うつむく乗客たちを睨んだ。
オレはお前らとは違う。絶対に。
いつまでも奴隷でいられるか。
オレはここで、絶対出世してやる。
そして、いつか家族を迎えに行く。

一条は小銭を精算機に投げ入れた。




「カイジさん、無茶ですよっ!」
「カイジ君!!」

やめとけばよかった……。
何でオレはこんな所にいるんだ……??
つい30分前までは温い教室で惰眠をむさぼっていたというのに……!!

下からは強風が叩きつけてくる。真冬の風は容赦なくカイジの体を煽る。
フェンスを掴んでなければ、すでに落ちているだろう。
こうして立っているだけでも、膝がガクガク震えて目眩がした。

(あぁ……もう、謝ってしまいたい!! ごめんなさい一言で済むんだ。何を迷う必要がある……? が、しかし、……! しかし……!)

「カイジ君!!」

呼ばれてカイジは目覚めた。フェンス越しに高木、石田さん、いつものメンバーがいる。
そして兵藤和也。
「高木……! よく見とけっ……!!」

カイジは一歩踏み出した。
それだけでいい。屋上から落ちるのは。

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