圧縮的世界
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子供が泣いていた。 ここまで感情を露わにした泣きっぷりを見てると、自分とは同じ生き物には見えなかった。

「姉ちゃんのバカ〜〜〜〜!!」
「……うるさい」


砂場から立ち上がり、しげるはその子供を振り返った。

自分と同じくらいの子供が、涙と鼻水で濡れた顔を向けていた。

(まゆげふと……)

(かみ、しろ……)

お互いの第一印象はこんな感じだった。


「どうしたの……」

しゃくりあげる子供の背を、そっと触る。
涙に濡れた大きな瞳を向けてくる。


「姉ちゃんが……お姉ちゃんが、おれのお菓子取った……!!」

お菓子ごときでこんなに騒げるのか。しげるは、ますます珍しいものを見るかのように子供を見つめた。

それからポッケを探り、目当てのものを掴みだした。

子供の目の前につきつけてみせる。

「……あめ玉?」

涙が止まり、興味を示したようにあめ玉を見ている。
やがておそるおそる手を出して、あめ玉をつかんだ。

包みをぺりっと剥がして、口に入れた途端に太陽みたいな笑顔がこぼれていた。

「ありがと!」



表情の変わりように驚いたものの、しげるは自分の砂城に戻っていく。

「きみ、名前は?」

「しげる……」

「おれはいとうかいじ! よろしくな!」

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