1/6ページ目 店から出ると、前の通りに人が倒れていた。 すでに煌びやかないでたちの同僚たちに囲まれている。 花に集まる蝶みたいだったけど、残念ながら倒れた人は花みたいに綺麗じゃない。 薄汚れた服に、擦り傷だらけの体。長い髪に、更に特筆するべき所は耳の縫合痕だ。 「姫野、どうするこれ」 「店の前の掃除当番、今週はアンタよね」 美しい顔に隠されたきつい視線が突き刺さる。 「いや、あの……どうするって言われましても……アハハ」 新顔はなかなか辛い。キャッスルに来てからずっと向かい風が吹いてる感じだ。いつ止むんだか……。やれやれ。 「あ、ママさん」 和服美人、最後の大和撫子を自称するママが煙管を吹かしながら、キャッスルから出てきた。 「……汚いね」 ウンウンと、同僚たちはうなづく。 「……おまけに匂う」 これにも同意。濡れた犬の匂いがする。十円を濡らしたような。はっきり言って臭い。 「甲斐性も無さそうだ」 確かに……お金持ってなさそう。もってたらこんなとこで倒れはしないだろう。 「姫野……拾ってやりな」 「ぇえ?!」 てっきり放置かと思った。 出たよ、ママの悪い癖。なんでも拾うんだから。犬でも猫でも、人間だって。 同僚たちを従え、ママは店に帰っていく。 「一人で運べっていうの……?!」 あ〜、もううんざり。そういえば、今日の星座占い、最低だったわ。 <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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