日常の情景
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カイジは日常に帰ってきた。
名誉も賞賛もない、ありきたりな教室へ。

自宅療養のち、うるさいマスコミと黒服から逃れるために知り合いの病院に入院していた。
学園に戻るのは、高木の墓参り以来だ。ここ数日はアカギとも会っていない。

変わってない学園内に安堵しつつ、45組前についた。
教科書を読む教師の声が廊下に流れてくる。
断ち切るように、教室の扉を開けた。

クラスメイトたちは一斉にこちらを見る。
一瞬の静寂。
予想外の反応に不安になり、おずおずと片手を上げた。

「……よぉ」
「カイジさん!!」「カイジくん!」
「怪我はもういいの?!」
「カイジ、テレビ見たぞ!」


前と変わらない、むしろそれ以上にこちらを心配してくる面々にうなづく。

「ああ……。心配かけたな」

みんな感動したように目を輝かせている。
席につくと何故か隣じゃなくて、自分の前に座ってる一条が、心配そうに怪我した右手と左手を見る。

「おはようございます」
「おはよう、しげ……」

隣の席をまじまじと見る。
ここは一条の席だが、どう見てもアカギが座ってる。

「なんで、お前がうちのクラスにいるんだよ!」
アカギはいけしゃあしゃあと授業を受けていた。
何故か前の席の石田さんが立っているのが不憫だ。

「久しぶりに会っておいて、随分な口ですね」
「いや、だって普通突っこむだろ……」
「黒服に狙われてるカイジさんを守るには、ここが丁度いいんですよ」

とアカギはそっけなくノートの書き取りに戻る。
クラスメイトや教師までも無関心だ。

「それはありがたいけど……」

一人で騒いでいても仕方ないか。
事実を受け入れ……というか放置して鞄から教科書を取りだした。

ノートを広げて、黒板をうつそうとシャーペンをにぎる。
が、書いた文字は大きく踊った。

「………」

消しゴムをかけて、気を取り直して、また文字を書く。が、またノートに毛虫が産まれただけだった。
傷はちゃんと治療したが、やっぱりまだ力が入らない。
じわりと涙が浮かんでくる。

右肩に折れた肘は治療費がだいぶかかったし、勝負自体も引き分けだったし散々だ。
あそこで勝負じゃなく、金を貰っていれば……。


「しげる、ここわかんないんだけど……」

アカギのノートを指差すと、アカギは教師よりもわかりやすく教えてくれた。

涙を拭って笑顔を向けた。

「流石しげるだな」
「………カイジさん。さっきから誘ってるんですか?」
「えっ?!誘ってるって……」

かあっと顔が赤くなる。
ペンを握った手に手を重ねられ、足が触れ合う。

「やっ、やめろよしげる……」
「嫌ですか」
「そうじゃなくて……」
「カイジさんも、オレに触れたいんだろ?」
「バカッ……! よせっ……」
「素直になりなよ……」

頬から髪にかけてすっと、冷たい手が入っていった。
アカギの顔が近い。慌てて顔を目一杯そらした。

「嫌だとか素直になれとか、そういう問題じゃない。今は……っ、授業中だろうが!」

クラスメイトたちは関係ないふりをしつつ、黒板に集中しようと大変な努力をしていた。



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