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元ホステスで色んな話を訊いた亜理沙でも、巨大な猫に喰われて死ぬなんて話訊いたことがない。

何故ここへ来てしまったのか、何故こんな状況になるのか、亜理沙は混乱して頭が真っ白になった。
何をすればいいのか、わからない。
一体ここはどこで、私は何故ここにいるの?

一歩も動けず、後ろのドアに貼りついていた。
猫が合間を縮めてきて、後少し。生臭い息がふゎっと体にかかる。

(そうだ……カイジ!)

あのよくわからない男が言ったことを思い出す。
ドアノブに乗った途端、猫の太い足が亜理沙のいた空間を切る。

信用してるわけじゃない。
お互いの利害が一致してるから、利用してるだけ。

亜理沙は鍵を回し、ドアを体当たりで開けた。

「………!!」

隣の部屋にはカイジはいなかった。
すっからかんだ。

「ぁ……!」

突進からの、猫パンチを寸での所でかわす。
布が裂け、胸をジワリと血が濡らした。胸から流れでた血は足元にぽたりと落ちていく。


この痛みには覚えがあった。
心ごと軋む、胸を裂く痛み。

『亜理沙のB……』

「くっ………」

カイジ、達也クン。
どうして裏切ったの。

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