1/7ページ目 深夜のダンスホール。 ディーラーの仕事をやめた後も、きっちり掃除当番だけはこなしていた。 すでに中央のシャンデリアの灯りはともっていない。 磨かれたホールに、天井の小さな灯りが反射している。 「カイジくん、来てたのか」 モップを横に、階段に座っていると一条がこちらへ向かってくる所だった。 「何か用ですか、一条主任」 すっかり表情の抜け落ちたカイジを見て、一条は眉を寄せた。 帝愛の犬と呼ぶに相応しい、和也の付き人。カイジは船でも有名だった。 「坊ちゃんの相手はしなくていいのか」「もう寝かせた」 「………」 カイジは煙草をくわえて、火をつける。その手のひらと首に真新しい切り傷を見つけ、一条は黙りこむ。 何を今更という感じだ。もう2年近くもカイジは、和也の専属をしている。傷なんて、珍しいことじゃない。 死ななければいいのだ。 「近々、坊ちゃんの大事な客が来る」 「そこで問題なのは、お前だ」 「?」 「隣に陰気臭く突っ立ってる、お前が邪魔なんだ」 「ハァ……?」 「少しは笑顔で楽しそうにしたらどうだ」 「無茶言うな……。楽しくないのに笑えるわけねぇだろうが」 「笑える。それが大人ってもんです!」 一条が顔を掴んできて、無理に頬を動かそうとする。 「いたた、何しやがる!」 「ほら、こうやってニパッ〜と」 「ニパッ〜じゃねぇよ!やめ〜ろ!」 一条を剥がして、背中を向けて距離を取る。 「大事な客って、何だよ」 「お見合い相手です」 <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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