王子様と私2
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深夜のダンスホール。
ディーラーの仕事をやめた後も、きっちり掃除当番だけはこなしていた。
すでに中央のシャンデリアの灯りはともっていない。
磨かれたホールに、天井の小さな灯りが反射している。

「カイジくん、来てたのか」

モップを横に、階段に座っていると一条がこちらへ向かってくる所だった。

「何か用ですか、一条主任」

すっかり表情の抜け落ちたカイジを見て、一条は眉を寄せた。
帝愛の犬と呼ぶに相応しい、和也の付き人。カイジは船でも有名だった。


「坊ちゃんの相手はしなくていいのか」「もう寝かせた」
「………」

カイジは煙草をくわえて、火をつける。その手のひらと首に真新しい切り傷を見つけ、一条は黙りこむ。




何を今更という感じだ。もう2年近くもカイジは、和也の専属をしている。傷なんて、珍しいことじゃない。
死ななければいいのだ。


「近々、坊ちゃんの大事な客が来る」

「そこで問題なのは、お前だ」
「?」
「隣に陰気臭く突っ立ってる、お前が邪魔なんだ」
「ハァ……?」

「少しは笑顔で楽しそうにしたらどうだ」
「無茶言うな……。楽しくないのに笑えるわけねぇだろうが」
「笑える。それが大人ってもんです!」

一条が顔を掴んできて、無理に頬を動かそうとする。

「いたた、何しやがる!」
「ほら、こうやってニパッ〜と」
「ニパッ〜じゃねぇよ!やめ〜ろ!」

一条を剥がして、背中を向けて距離を取る。

「大事な客って、何だよ」
「お見合い相手です」

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