ヒーロー理論
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首を絞められている。いつもの自分の部屋、いつものベッドを背に、アカギがのしかかっている。

殺意に満ちた顔が、カイジを見下ろしていた。
いつもとは違う、憎しみがこもった目。
何故。どうして。

「っ……く…るし……」

部屋には黒い紗がかかりだし、光る点が舞いだした。

息ができない。悲鳴すら言葉にならなくて、手をのばした。

(アカギ………)


「………!」

視界いっぱいに空が広がっていた。
カイジは起き上がり、額の汗を拭いた。穏やかな日差しなのに体だけが冷たかった。


(またこの夢か………)


中学に入る時に決別した友人。その友人が何かにつけては、夜におしかけてくる。

しかもあの時の夢だ。ケンカ別れの前日にあった、あの状況。

夢の中のオレは、抵抗を一切しない。むしろ……最近はあの状況を喜んでる節すらある。

夢の中で意識が途切れる時に、アカギが手を握ってくれる。 首から手を離し、頭を撫で……。


「オレって……大丈夫なのか? 変態なんじゃ………」

春の空を見上げてひとりごちる。
ため息をついて立ち上がる。

屋上からはグラウンドが見えた。
校舎への桜並木の道を、新入生たちが慣れない様子で歩いている。

そういえば、もうすぐ入学式だ。

(オレには関係ないな。寝るか……)

カイジは春の空にゆるいあくびをはなち、再び横になった。

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