1/10ページ目 いけ好かない教師がいる。伊藤カイジというヤツだ。 命を大事にとかドラクエの作戦みたいなことを、ことあるごとに必死に語る。 一目惚れの反対があるとしたらそれだ。一目で嫌いになった。新任の教師が紹介され、マイクの前に立ったその日から、一条はカイジが嫌いになった。 見てるとイライラする。 自分は生徒のことをよくわかってるみたいな態度も、不良生徒に体当たりで向かっていく姿も、 いじめられっ子を優しく慰める姿も全部。 「せ〜んせ」 廊下をカイジが歩いている。両手には抱えるほどの教科書。 「亜理沙……なんだ?」 カイジは重たい教材を抱えながらも、亜理沙を振り返った。 (あのバカ……落としてるじゃないか) 落ちた教科書を亜理沙は無造作に踏んだ。手を水平にしてカイジの頭まで高くあげた。 「先生ってさぁ、背高いよね〜」 「え……。そ、そうか?」 「マジマジ。なんか勿体ないんだよね〜」 「……あ、亜理沙……重たい……ち、ちょっと話、後でいいか」 「で、実際何センチあるわけ?」 「え、えーと……」 カイジの両腕は重みに負けて下に下がっている。今にも教材を落として尻餅をつきそうだ。 (まったく……見てられないな) 「先生、それオレが運んでおきます」 「えっ、でも……」 モタモタしてるカイジから教材をひったくった。 まったく、トロ臭い。貧乏臭いのは元からだから治せないけど、もっとしゃきしゃきしろよ。 「悪いな、一条」 カイジは柔らかく笑った。 カイジの大きい手のひらがこちらの頭を撫でる。 コイツ……なにやってる。 小学生じゃないんだぞ、オレは。 カイジの癖だ。誰構わずにすぐ頭を撫でる。 人の心に無遠慮に入ってくる、そのプライバシーのなさが頭にくる。 「先生、前から思ってましたが、先生は……」 「センセー!」 金髪の生徒が、カイジの背に飛びついてきた。 「わっ?! コラッ、佐原、危ないだろ!!」 佐原はぺろっと舌をだす。目的を果たした佐原機はさっそうと帰還していく。 「まったくもう……。しょうがないヤツだな」 佐原が乗ったカイジの背には、『彼氏募集中』と書かれた紙が貼られていた。 (しょうがないのはお前だ) クスクス笑いだす生徒にも気づかない。 一条はカイジをほうっておくことにした。 <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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