二人の世界
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「おいっ……大丈夫か?」

精悍な男の顔がフェードインする。
オレはゴミ袋を枕に寝ていたらしい。

頬を触ると血がついていた。
これは……自分の物じゃないな……。


「お前、飲み会にいたヤツだろ? こんな所で寝るなよ」

これは……居酒屋で見た顔な気もするが、思い出せないな……。

「どうしてここにって……。泥酔してたお前が、急に出て行ったから……その……」

寝たまま見上げると、男の顔は酒のためか少し赤かった。
「……心配だったから」

剥き出しの心臓を触られているような、嫌な感覚だった。
この男に気を許してはいけないと思いつつも、手を貸してもらえるのを待っているオレがいた。

「おい、待てよ。どこ行くんだ」

お節介、大きなお世話と罵倒するも相手はこたえていない。
「怪我してるヤツをほうっておけるかよ……」

ゴミから出て、千鳥足のオレを男は支える。
誰なんだコイツは。

「えっ……。オレは、伊藤カイジだけど……」

伊藤カイジ。
もつれた舌で読んでみた。
ついでに自分の名前もはなった。

「赤木しげる……覚えやすそうな名前だな」

人の良さそうな男、カイジは酒気にまみれた顔をにやっと崩した。
そのまま酔いが飛んでいくような、晴れやかな笑顔だった。

「とりあえず……オレんちでも行くか?」

あくまでもほうっておいてもらえないらしい。
男のしつこさに、オレはついに観念して苦笑した。

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