1/14ページ目 談話室の空気は冷たく澱んでいた。 時が止まってるみたいだ……。誰も喋らないし、身じろぎすらしない。 時計の音だけが、時が進んでる証拠だった。 9時15分。 一通り着替えて、温かい濡れタオルも貰ったのに、歯の根がカチカチと鳴っていた。 タオルを指に馴染ませても、指先は固く、細かく震えたままだ。 「死体は……安藤ケイコさんで間違いないそうです」 死体発見から30分以上たって、最後に談話室に戻ってきたのは小林さんだった。 一同は顔をあげて、またすぐにうつむいた。 OL二人は鼻を鳴らしてさっきから泣き止まない。 「救急車と……警察は」 「もう手遅れです。長い時間雪の中に埋もれていたんでしょう、体がカチコチで……。 警察は吹雪のせいで、明日に来るそうです」 上からみどりさん、ローズさん、みゆきちゃんが降りてきた。 「サトミさんは……?」 「眠いからほうっておいてくれって」 「……何を考えてるんだ」 小林さんはため息をついた。疲れてるようだ。雪の中を這って死体を運んだんだ、無理もない。 「……ケイコちゃんはどうして死んだのかしら?」 触れてはいけない話題だったらしく、一同は真理さんをギョッとした顔で見ている。 「……警察が明日まで来ない以上、私たちが死体の状況を調べたほうがいいんじゃないかしら?」 「どういう意味だい、真理」 透くんに問われて、真理さんはローズさんを見る。ローズさんはうなずいた。 「他殺か事故か、知っておく必要がありますわ……。夕方もこの辺で事件があったのでしょう? もしかしたら、同じ犯人なのでは……」 OLたちは短い悲鳴をあげて、震える体をお互い抱きしめた。 まさか、ヘルメット男を殺した犯人が、まだこの辺に潜んでるっていうのか……? そんなミステリー小説じゃあるまいし。 オレは声に出して否定できなかった。 現に殺人が起こってるのは事実なんだ。それも近所で。 <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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