1/20ページ目 暗闇から何か音が聞こえてきた。 しゃりしゃりとコンクリートの床に擦れる音は、無機質で重く伸びている。標的が大きい物を引きずっているとわかる。 四方を壁に囲まれたこの迷路では、どこから音が聞こえてくるのかわからない。 暗闇に視線を投げかけるも、音の出所はいずことして知れなかった。 北見は近くの通路にいるはずの仲間を呼んだ。 「おい山崎、田口……!」 仲間の返事はいくら呼んでもない。 死みたいな静寂に北見は心細さを感じていた。 ふと、後ろに気配があった。 金属を引きずる音が止まっていることに気づいて、北見は冷たい汗を背中に感じた。 ゆっくりと振り返ると、そこに銀の弧が描かれるのを見た。 何か鉄板のような固い物がぶつかる、火花がはぜるような音がして北見は床に投げ出されていた。 鼻腔と口の中が鉄臭い。 起きあがろうとして膝をつくと、視界は大きく左に傾いて床に尻をついた。 背後でじゃりっと音がした。 落ちている松明を拾って闇に掲げてみせる。 火影に映し出される陰影に北見は全身から叫んでいた。 <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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