1/9ページ目 年齢、国籍、姿形。任務によって全てを偽ってきた。 そうしてるうちにいつしか自分にまでも嘘をつき、他人の心を読み取ることだけに集中してきた。 それがオレであることの証、カマイタチであることがオレの唯一のアイダンティティだった。 他人とは騙すためだけの存在で、入れこむべき物じゃない。 彼をさらってきた理由は犬を拾った時の衝動に似ていた。 利発そうな瞳だったり、艶光りする毛並みだったり、可愛いなと思った。 オレにはとうてい手に入れられない、純粋な心が気になった。 憧憬と言った方がいいかもしれない。 隣にいたらさぞや救われた気持ちになるだろう。 現にオレがあのペンションの前、そぼ降る雪の中で、十余年を過ごした仲間を撃ち殺した時にも何も感じなかった。 ポケットの中で微かに震える手が、オレの心を悔しさや悲しみから遠ざけてくれていた。 「アカギ……!」 久しぶりに隠れ家に帰ると、暖かく大きい物が抱きついてきた。 温もりがオレの身体にじんわり溶けていく。 嘘とか金とか拳銃とか……、そんな世界からオレはそっと抜け出して、カイジさんに寄りかかった。 「ただいま、カイジさん」 「おかえり……!」 <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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