1/16ページ目 引き際を誤ってる。 今すぐに席を立ってカードを投げ捨てるべきだ。 でなければ、長年苦楽をともにしてきた左腕とおさらばすることになる。 『あんたの腕が欲しい』 カイジはそう言われても、これまでは何とか誤魔化してきた。 アカギとの勝負、勝率は一割を切ってる。頭が正気なら、体なんか賭けられるわけがなかった。 だけど今日はツイてた。ふらりと入ったパチンコ屋では勝ったし、スクラッチくじも当たった。 ほんの数千円だが……。 だからつい、勝てると思ってしまった。今日がアカギに勝てる日だと。 『カイジさんは何が欲しいの。カイジさんの腕と対価になるんだ。何でもいいよ……』 『お、お前が……』 『?』 『や、優しくしてくれること……!』 アカギが笑った。 すげぇ楽しそうだ。まったく……言うんじゃなかった。どうしてこれまで奪われた給料を賭けなかったのか。アホかオレは……! 『カイジさんは……いつもそうだな。オレから何か奪おうとしない。……オレと真逆だ』 大体腕をもらって何の得なんだ。飾るのか? 玄関や床の間に? オレにそんな趣味はない。 とまぁ……こんな調子で勝負が始まった。 紫煙につぐ紫煙、長考につぐ長考。部屋の空気は煮詰まっていた。 何時間も悩んだ末、カイジの手札に残ったのは敗北だった。 「ゲームセットだ、カイジさん」 なんで。どうして。いつも。オレばっかり。 <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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