1/12ページ目 「お前のことなんか好きじゃない」 「………」 勝負の夜。 左腕を賭けて勝ったもののうやむやにされ、そればかりかその代替えまで反故にされてアカギは不機嫌だった。 さらに追い詰めたはずの獲物はぬるりと網を抜けた。もう少しで捕らえられたのに。 「……アカギ、もう一度勝負だ」 「……なら、今度は足をもらう。左腕も勝ったらちゃんと持っていく」 「あ……足っ!? な、なんで……! 嫌だよ……!」 「腕や足がなくても、オレが側にいて支えてあげますよ。大丈夫」 「どこが大丈夫なんだよ! ぜ、絶対嫌だ……」 「仕方ないな……。なら右足の半分でいいですよ。だけど、カイジさんが取り戻せるのも、左腕の半分だ」 カイジはうなずくしかなかった。 左腕を取り返そうにも片足を持って行かれるのはリスクが大きい。せめて半分なら……。 どっちみち腕を取り返さなきゃ道は開けない。カイジは覚悟を決めた。 勝負はあっけなく終わった。有り体に言うとカイジの勝ちである。 とっさにジャンケンポイとやった数10秒の勝負だった。 「………」 アカギは出したグーの手を睨んだ。 こんな勝負に意味はない。自分は悩みに悩み抜いて、実力を出し切ったカイジを負かしたいのだ。 だけど、そんな真剣勝負でも、落とす直前でカイジはいつも勝ちを拾っていく。 「やった!! やった、やった!!」 カイジは子供みたいに喜んでいる。その様子が無邪気で益々イライラしてくる。 「じゃあ、左腕の……肘から手まではオレのな。肩から肘まではお前の」 カイジは腕を取り戻すと言った時に、そこが動かせることを前提にした。アカギの配当の肩から肘を落としたら、その先は動かせない。 これでアカギの配当は事実上無しになった。 こういう所だけは頭が回る。クズ人間たる由縁だ。 アカギはゆらりと立ち上がって、カイジの腕を捻った。 「つ……!」 背後から睨みすえて動くなと目で命じる。 見えない縄でもあるのかカイジは捻られたまま、じっと姿勢を変えるだけで命令に従った。 肉付きのいいしまった首を目で追って、襟口を広げた。左肩肩甲骨の上あたりに噛みついた。カイジの体は震えるが腕は離してやらない。 焼き印のある二の腕から手のひらまでを撫で、人差し指を口に含む。 手のひらを舐めて指や甲、いたる場所に牙で傷をつけていく。 「あ……やめ………」 「カイジさん……、この左腕はオレの物になるんだから、他のヤツらには触らせるなよ?」 <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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