シーソーゲーム
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「お前のことなんか好きじゃない」
「………」

勝負の夜。
左腕を賭けて勝ったもののうやむやにされ、そればかりかその代替えまで反故にされてアカギは不機嫌だった。
さらに追い詰めたはずの獲物はぬるりと網を抜けた。もう少しで捕らえられたのに。

「……アカギ、もう一度勝負だ」
「……なら、今度は足をもらう。左腕も勝ったらちゃんと持っていく」
「あ……足っ!? な、なんで……! 嫌だよ……!」
「腕や足がなくても、オレが側にいて支えてあげますよ。大丈夫」
「どこが大丈夫なんだよ! ぜ、絶対嫌だ……」
「仕方ないな……。なら右足の半分でいいですよ。だけど、カイジさんが取り戻せるのも、左腕の半分だ」

カイジはうなずくしかなかった。
左腕を取り返そうにも片足を持って行かれるのはリスクが大きい。せめて半分なら……。
どっちみち腕を取り返さなきゃ道は開けない。カイジは覚悟を決めた。

勝負はあっけなく終わった。有り体に言うとカイジの勝ちである。
とっさにジャンケンポイとやった数10秒の勝負だった。
「………」

アカギは出したグーの手を睨んだ。
こんな勝負に意味はない。自分は悩みに悩み抜いて、実力を出し切ったカイジを負かしたいのだ。
だけど、そんな真剣勝負でも、落とす直前でカイジはいつも勝ちを拾っていく。

「やった!! やった、やった!!」
カイジは子供みたいに喜んでいる。その様子が無邪気で益々イライラしてくる。
「じゃあ、左腕の……肘から手まではオレのな。肩から肘まではお前の」

カイジは腕を取り戻すと言った時に、そこが動かせることを前提にした。アカギの配当の肩から肘を落としたら、その先は動かせない。
これでアカギの配当は事実上無しになった。
こういう所だけは頭が回る。クズ人間たる由縁だ。
アカギはゆらりと立ち上がって、カイジの腕を捻った。
「つ……!」

背後から睨みすえて動くなと目で命じる。
見えない縄でもあるのかカイジは捻られたまま、じっと姿勢を変えるだけで命令に従った。
肉付きのいいしまった首を目で追って、襟口を広げた。左肩肩甲骨の上あたりに噛みついた。カイジの体は震えるが腕は離してやらない。
焼き印のある二の腕から手のひらまでを撫で、人差し指を口に含む。
手のひらを舐めて指や甲、いたる場所に牙で傷をつけていく。

「あ……やめ………」
「カイジさん……、この左腕はオレの物になるんだから、他のヤツらには触らせるなよ?」

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