1/22ページ目 オレの名前は伊藤カイジだ。 ジェームズボンドでもなければ、段ボールが好きな伝説の傭兵でもない……。 だから無理だったんだ。伝説のスパイの追跡なんて。 体は胸まで雪に埋もれていた。埋もれた手足は、自分の物じゃないように固くなって、オレの意志から遠ざかっていく。 持ち物はなく、大した防寒具さえ持たずに移動は徒歩だ。 最初からわかりきってたことだ。破綻か敗北するなんて。 帰ろう。オレはオレの日常に帰るんだ。 怪しげな薬なんて、スパイたちに任せておけばいいじゃないか。 ちらほらと落ちてくる雪と一緒に腹がなった。 (……ローズさん) 花弁を落とした椿みたいに寂しげなローズさんの顔が見えた。 ふとしゃりしゃりとなにかが雪の上を滑る音が聞こえてきた。 続いて銃声。二発の銃声は雪の世界に高くこだまする。 ぎょっとして振り返ると同時にスノーモービルに乗った男と目があった。 瞬間にオレの体から火が溢れていく。 「アカギ……!!」 アカギは片手を大きくのばしてこっちに突っ込んできた。 雪の中でもがくオレの首根っこを掴みあげた。 <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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