1/9ページ目 どんな仕事も完璧にこなし、匂いすら残さない。冷酷非道の諜報員……。それがかまいたち。 「アンタとオレは……契ったはずだ」 だけど、何か……ちょっとおかしい。 光の無かったアカギの目は、今はオレをまっすぐに射止めてる。 閑散としたスキー場、冷たい空気はアカギの肌を尚更白く見せていた。 頬だけが赤い。 「千切る?ちぎるって、なにを」 「だから、その……アンタとオレは……夫婦ってこと……」 「は?」 「カイジさん、オレと来いよ」 冷酷なスパイの手も言葉も、今は人肌程度にあったかい。 長野の寒空で、この手の暖かさはちょっと抵抗しがたい。 だけど……今なんて言った? これが小説やサウンドノベルなら、バックログを読み返してるぞ。 「あっ?!」 捲ってきた左腕に唇が落ちてきた。思わず後ろへと飛びすざった。 おかしい。傷もないのに、左腕がキシりと痛んだ。じくじくと後を引く痛みに顔をしかめる。 「テメェ……!! カイジさんに触るな!!」 後方で待機してるはずの平山くんが、全速力で雪を蹴たてて走ってきた。 鼻は赤いし、手も冷えきってる。セーター一枚で飛び出してきたのか。 懐炉がわりにと平山くんの手を握った。 平山くんの目尻はデレっと見るからに下がった。 <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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