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賭ケワズライ
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とある雀荘。オレは散らばった牌の上に突っ伏していた。
……いつものことだ……。いつものことなんだけど……また負けた。
また負けちゃった……!

「く、クソォ……アカギ、覚えてろよ!」
「3215敗めだっけ? カイジさんの」
「いちいち覚えてんじゃねーよ!」
「……やれやれ。カイジさんはオレに負けるのが好きらしいね」
「うう……そんなわけないだろ……! 今日だって一生懸命頑張ったのに!」

見上げると人を小馬鹿にしたような端正な顔があった。
鼓動が跳ね上がる。
冬の真っ赤な残照がアカギの顔をさっと陰らす。


「オレはカイジさんの考えが手に取るようにわかるのに。カイジさんはオレの考えがわからないんだね」
「……!!」

いつもより重い痛みだった。
その通りだった。
アカギはオレの気持ちに気づいている。
なのに、オレと来たらコイツの考えがまったくわからない。
オレにだけ冷たい。乱暴にされる。
一体どうして。


「なら教えろよ……お前の気持ち」
「……こっちにおいで」

詰めるより早く髪を引っ張られた。 

「くっ……やっぱりお前、オレのこと…! オレのどこが嫌いなんだよ!」
「……嫌い?」
「嫌いだろ!! いつも意地悪ばっかり!」
「ククク……なるほど。だからいつもアンタ、オレにビビってたのか」

悪魔みたいな形相がふと優しく弛む。
それは綺麗な笑顔だった。

「好きだよ、カイジさん」
「な、な、な」
「アンタの目」
「ひゃっ?!」

瞼に淡い感触が落ちる。眉をなぞるように唇が上がってくる。

「アンタの髪……」
「わっ……!!」

アカギの吐息が髪にかかる。抱かれてオレは一歩も動けなかった。
目眩がする。ぐらぐら……。

「なんてね……」

急に手放されたオレは床にひざまずいていた。
足に力が入らない。

「ククク……からかいがいがあるな、カイジさんは」
「くっ……」
「オレがアンタを好きなわけないじゃない」
「……うっ」

涙がつうと頬を流れる。
悔しい……また翻弄されてしまった。
こっちだって、こっちだって。アカギをぎゃふんと言わせたい。

「お……オレだってな、お前のこと……!」
「……」
「す……」
「……す?」
「バカ……!! 帰る……!!」


雀荘に一人残されたアカギは牌を強く握る。

「……もう少しか……」

もう少し強く押さないと奪えそうにない。
面倒な男に惚れてしまったものだ。


おわり




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