1/1ページ目 ……いつものことだ……。いつものことなんだけど……また負けた。 また負けちゃった……! 「く、クソォ……アカギ、覚えてろよ!」 「3215敗めだっけ? カイジさんの」 「いちいち覚えてんじゃねーよ!」 「……やれやれ。カイジさんはオレに負けるのが好きらしいね」 「うう……そんなわけないだろ……! 今日だって一生懸命頑張ったのに!」 見上げると人を小馬鹿にしたような端正な顔があった。 鼓動が跳ね上がる。 冬の真っ赤な残照がアカギの顔をさっと陰らす。 「オレはカイジさんの考えが手に取るようにわかるのに。カイジさんはオレの考えがわからないんだね」 「……!!」 いつもより重い痛みだった。 その通りだった。 アカギはオレの気持ちに気づいている。 なのに、オレと来たらコイツの考えがまったくわからない。 オレにだけ冷たい。乱暴にされる。 一体どうして。 「なら教えろよ……お前の気持ち」 「……こっちにおいで」 詰めるより早く髪を引っ張られた。 「くっ……やっぱりお前、オレのこと…! オレのどこが嫌いなんだよ!」 「……嫌い?」 「嫌いだろ!! いつも意地悪ばっかり!」 「ククク……なるほど。だからいつもアンタ、オレにビビってたのか」 悪魔みたいな形相がふと優しく弛む。 それは綺麗な笑顔だった。 「好きだよ、カイジさん」 「な、な、な」 「アンタの目」 「ひゃっ?!」 瞼に淡い感触が落ちる。眉をなぞるように唇が上がってくる。 「アンタの髪……」 「わっ……!!」 アカギの吐息が髪にかかる。抱かれてオレは一歩も動けなかった。 目眩がする。ぐらぐら……。 「なんてね……」 急に手放されたオレは床にひざまずいていた。 足に力が入らない。 「ククク……からかいがいがあるな、カイジさんは」 「くっ……」 「オレがアンタを好きなわけないじゃない」 「……うっ」 涙がつうと頬を流れる。 悔しい……また翻弄されてしまった。 こっちだって、こっちだって。アカギをぎゃふんと言わせたい。 「お……オレだってな、お前のこと……!」 「……」 「す……」 「……す?」 「バカ……!! 帰る……!!」 雀荘に一人残されたアカギは牌を強く握る。 「……もう少しか……」 もう少し強く押さないと奪えそうにない。 面倒な男に惚れてしまったものだ。 おわり <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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