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色のないひと
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(アカギと間違えてるんだよな……)


首に絡みつく腕。
長い髪がオレの視界をサッと流れた。
しだれかかってくるなりは確かに男の物で。
雀荘に時折現れる、不思議な人。伊藤カイジ。

「ちょ……ちょっと、カイジさん……」

溺れる人間のように口をパクパクさせて何かを伝えてくる。
そのまま力を失って膝から崩れていく。

「お……おい?!」

(つ……つい、お持ち帰りしちまった……)

雀荘に放置するわけにはいかねぇ。
カイジさんには不思議な魅力がある。
雀荘でも彼をからかったり、気を引こうとする奴は多い。

肩にカイジさんが寄りかかってる。
布団を巻いて温めてやっても肌は冷たい。

「……のど、渇いた……アカギ……」

アカギが雀卓にいるとカイジさんは熱心に見てる。
だけどまさか恋人だとは……。
アカギはしばらく雀荘に顔をだしてない……。

「血……飲みたい……」
「え」

カイジさんの頬から涙が流れる。
腕を取っても力も感じない。
この様子じゃ2、3日食べてなさそうだ。
だけど今、なんて言った……?
血……?
血を飲みたいのかこの人。

カッターを取ってきて指に刃を立てる。赤く線を引く。

(いてっ………)

指をそっと近づける。舌の感触にオレは飛び上がった。
口に含まれた。
ちゅ、と指先から音がでた。
カイジさんは一心不乱に吸ってる。

「……ほ……本当に 吸うんだ……」

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