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鬼はうち
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太木ガス子のもとには青年が来ていた。
水晶の歪みに彼の顔は陰鬱に沈んでいた。

「ようこそ、星海の館へ……」

宇海零の影には、多くの死者がゆらめいていた。
昏い場所から手招きをしている。
幾百年先を占う彼女でも珍しい客層だ。

「さぁ、何を占ってほしいの?」
「すごい借金をしてて……」
「よくある話ね」
「やることなすこと、ついてなくて………」
「たまにいるわね」
「同僚からはパワハラを受けてて……いつも泣いちゃうんです」
「……そうは見えないわ」
「オレの同僚の話です」

太木の占いは予約制で三ヶ月待ちだ。
十万という高すぎる料金も、増えすぎる客やひやかし避けで仕方なく。

そんな彼女に、自分以外を占ってほしいという客ははじめてだ。
しかも恋人や家族でもなく……同僚?

「ここに占ってほしい人の名前を書いて。
彼の持ち物はありますか?」
「持ち物ですか? 急に言われても……髪の毛ぐらいしか……」

何でそんなもんを持ってる。
太木は占いはじめた。
暗黒に凶星が見えた。虚空にはただひとつ、孤独な光がまたたく。

「……最悪な星の下に産まれてるわ」
「やっぱり!」
「逆境から逆境……困難から困難……何かしら……彼のそばに……」

透明な世界をヒビが裂いていく。
水晶はふたつに別れて破片破片に零がうつった。
太木は目を覆って直視を避けた。

「……くっ?! これは……!
巨大で邪悪な影がついてるわ。神々の黄昏……、一人イスラム過激派組織……!!
それも三個も……!とても祓えない!」
「何とかできないんですか!」
「無理よ……、これを相殺できるとしたら……核ミサイルを持ってくるか」
「あとは……?」

「……あなたの中の鬼を目覚めさせるしかないわ」
「鬼……?」
「今は眠ってるけど……あなたの中に眠ってる……。
彼が幸せになるためには、それに賭けるしかないわ」

月のペンダントを取りだした。ミルク色の月長石でできてる。
顔の前でぶら下げて、ゆっくりと三日月は揺れはじめる。


「さぁ……起きるのよ」



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