鳥と僕。

古着の女。

彼氏が出来た。



初めて彼氏のうちに行く時、私はフリーマーケットで買ったお気に入りの花柄Tシャツを着ていくことにした。



お気に入りの服を着るとさらにうきうきさせてくれる。



彼氏のうちにつきインターホンを鳴らした。



ドアが開き、彼氏がそこには立っていた。



笑顔の彼氏。



でも私の顔から目を離し、服へと目が移った瞬間彼氏の上がった口元は平行になり恐ろしいものを見たような顔つきになった。



「それ、どこで買ったの?」



「これフリーマーケットで買ったの。」



「そう。」



間が少しあって「どうぞ。」と言い部屋に案内された。



部屋に入ってからも彼氏はぎこちない雰囲気で私としゃべる。



私の顔とTシャツを行き来する目。



笑顔と真顔の連続。



私はそんな彼氏を目の奥のほうで観察した。



「なー、佳代子。」



私はギョッとした。



彼氏も我に返って「あ。」という顔をした。



Tシャツに数秒目をやり私は理解した。



「私帰る。」



「あぁ。」



逃げるようにして私はその場を去った。



ひどくドアが重く感じた。



走って家に帰り、鍵を乱暴に開け、靴を脱ぎ捨て鞄を放り投げ息が落ち着くまで待った。



息が落ち着くのと反対に体中の血が騒ぎ始めた。



こうなってはもう止めることは出来ない。



乱暴に引き伸ばしたり無理な力を加えながらTシャツを脱いでゴミ箱の中に叩き入れた。



お気に入りのTシャツはもうお気に入りではなく嫌悪すべきものになった。



Tシャツはゴミ箱の中で、いじめられている子のように怯えていた。



私は見下ろしながら、フリーマーケットでこの服を売っていた顔もおぼろげな女のことを思っていた。





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